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そんな先生との関係は、父の再婚で新しい生活が始まった後も続いた。
義理の兄だという1つ上の大和は、初めて会った時から煩くてめんどくさくて、明るくて、苦手だった。
どうせあのクラスメートたちと一緒で、心の中では僕のことなんて嫌がってるはずなんだ。
けど、父は大和と話す時は本当に嬉しそうで、やっぱりあんな明るい息子が欲しいんだろうな、と思うとますます自分が新しい家族の中でもいらない存在に思えた。
先生だけが、僕を好きだと言ってくれる。
僕を必要としてくれている。
それだけが、心の拠り所だった。
なのに、美術準備室にたまたま鍵をかけ忘れたあの日。
よりにもよって大和に見られてしまった。
先生は気付いてなくて、あの後も抱かれ続けたけれど、僕は気が気じゃなかった。
大和はきっとこの関係を皆にばらす。
僕の普段の態度にきっと辟易しているから。
そうなれば、先生といられなくなる。
下手したら、先生も僕も学校を辞めさせられるかもしれない。
どうしよう。どうしよう。
大和は僕を貶める?
蔑ずむ?それとも、脅す?
怖かったけど、いてもたってもいられなくて、大和の部屋に行った。
…なのに、大和は本当に誰にも話さなかった。
安堵したと共に、大和のことを少しは違う目で見るようになった。
もしかしたら、ほんとに優しい人なのかもしれない。
でも、心から信じることなんてことは怖くてできなかった。
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