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何せ、僕のふくらはぎにとまるハチは、そのぐらいの比率を持ってそこに存在していたのだから。
足を指差しながら
「この辺からこの辺までハチが居た!って記憶しとるけぇ、確かだって!」
そう力説したら、みんなに笑われた。
「剛、お前、ハチに刺されたん、いくつのときよ?」
ひとしきり笑われた後、クラスで一番仲の良い寛行が、ニヤニヤ笑いながらそう問いかけてきた。
「じゃけぇ、四歳ぐらいん時っちゅったじゃん!」
人の話を聞いてなかったのかよ?
そんなニュアンスを込めて睨みつけたら、
「ってぇことは……身長、今より大分低かったよな?」
そう先制された。
「ったりめぇじゃん」
何を今更。
そこまで言って、僕はハッとなった。
「分かったか?」
寛行に勝ち誇った笑みで問われて、僕はみんなの言わんとしていることをやっと悟った。
小さかった僕。
小さかった僕の足。
そこにとまったハチだって当然それに見合う比率だったわけで――。
記憶とは、かくもてあてにならないものなのだ、と痛感させられた瞬間だった。
きっと足にこの穴ぼこがある限り、僕はその教訓を忘れないだろう。
寛行の嘲笑とともに思い出す、というのが癪ではあるけれど――。
終わり(20061012-20061026)
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