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 そんな感じで一人遊びをしているうちに、時間が経過していくというのが大抵のパターンだった。  本当は、父が近くを流れる川へ連れ出してくれることに期待していたけれど、田舎に帰った父は少しでも目を離そうものなら省三(しょうぞう)おじさんと一緒になっていつの間にやら酒が入ってしまう。  そうなると、僕ら兄弟の淡い希望は絶望に変わるのだ。  心配性の母が、僕と兄だけで川遊びに繰り出すのを許してくれるはずもなし。かといってかなづちの母がそこへ付き添ってくれることも期待出来ないからだ。  せっかく田舎へ来ているのに、幼かった当事は僕らだけで行くことが許されていた行動範囲は家の敷地内のみだった。  そんな限られた空間の中で、毎日顔を突き合わせては喧嘩している兄と遊んだってさして楽しいはずがない。  少し日をずらせばいとこのみんなと会えるはずなのに。自分たちだけそれに混ざることが出来ないんだと思うと、凄く悲しかった。  そう。少なくとも去年までは――。
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