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 何だかずっと一人だけの秘密みたいに思っていたのがバカらしく思えた。 「チェッ」  思わず舌打ちもしたくなるというもの。 「()ねるなや! なぁ、俺と剛とどっちが沢山(よーけ)アリジゴク採れるか競争しようぜ?」  もやもやした気持ちが後押ししたのか、兄の提案に、俄然(がぜん)ファイトが沸いてきた。 「おう!」  男らしくそう答えると、兄と僕は母の「二人とも頑張れ!」の声援を合図にしゃがみ込んだ。  しばらく夢中でアリジゴクを採り続け……そろそろ巣が見当たらないぞ、となった頃には僕の体はいつの間にやら壁に立てかけられたリヤカーのすぐそばまで来ていた。  ぶぅ~ん……。  重低音を響かせるその羽音に視線を向けると、大きなハチが右足のふくらはぎにとまるところだった。 「母ちゃん、ハチが!」  兄の声で母が慌てて駆け寄ってくる気配がした。  その間、僕の瞳には足に向けてゆっくりと曲げられるハチのお尻と、こちらをじっと睨みつける逆三角形の顔が映っていた。  刺される!  思わず立ち上がってそのハチを払いのけようとしたら、後ろから母に抱きすくめられた。  あっという間に口をふさがれてそのまま後ろに引きずられる。  その隙に、僕の足のハチは毒袋つきの針を足に打ち込んで飛び立ってしまっていたけれど、口を封じられていて悲鳴すら上げられなかった。  凄く、凄く痛かったのに! ――  後で母に「何で口をふさいだん?」と聞いたら、巣がそばにあることに気付いたので、余り騒いで他のハチが襲ってくることを回避したかったからだと言った。  僕を刺したのはいわゆる見張り役のハチで、巣はリヤカーの陰の地中に作られていたらしい。そこには軒下などに綺麗なまだら模様の巣を作るキイロスズメバチより一回り大きいスズメバチ――オオスズメバチ――の大邸宅があったのだ。
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