貴方の瞳に映るのならば

3/5
前へ
/5ページ
次へ
「私は安心しましたよ。お坊ちゃん、最初はお会いになるの渋っていたでしょう? でも、何だか良い感じみたいで」 「別に、そんなんじゃ」  からかうセリフに青年が反論しようとして、言葉を途切れさせた。  前髪で隠れていない方の目が痛むようで、手で押さえている。どうしました、と慌てる家政婦を手で制した。 「大丈夫。今日は日差しが強かったから、目が疲れただけだよ。ちょっと痛んだだけたって。心配性だな」  でも、と言いすがる家政婦に苦笑する。 「こっちの目が見えなくなった時も、ずいぶん心配していたよね。僕が少し歩くだけで追いかけてきて。おかげで(かわや)に行きづらいったら」  おどける青年に当然ですよ、と家政婦はむくれる。 「片目が失明されたんですよ。事故の怪我だって治っていなかったし。それに……」  何事か言いかけて口をつぐむ。  しかし、青年には続きが分かっているようで、そうだねとうなずいた。 「僕はあの事故で大事なものを失い、とても傷ついていた。肉体的にもそうだし、それから……心も」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加