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あいもかわらずワケのわかんねぇ奴だ。
確か御玲たちから白星は預けたとかそんなことを言ってた、ということをかつて聞いたが、だからといって応じる理由がまるでない。なんでそんな無意味で無駄な喧嘩をしなきゃならんのだろうか。
こっちは宿敵を倒したばかりで精神的にも疲れてんのに、お前の遊びに付き合ってる余裕なんざない。とっとと帰って風呂入って飯食って寝たいんだ。明日には明日の予定があるし、遊ぶんなら一人でやっててくれよ。
「お前に拒否権があるとでも思っているのか?」
俺の心中など知ったこっちゃねぇと言わんばかりに、裏鏡の冷え切った双眸は俺たちを逃さない。この場から動くことを決して許さないという意志が、俺たちを頑強に縛り上げる。
動いたら何をされるか分からない、でも分かるのはただ一つ。ロクでもないことする、ということだけだ。
「まあいい。拒むのであれば、拒めぬようにするまでだ」
裏鏡から溢れ出る殺気の密度が、一気に増した。身体からじんわりと脂汗が溢れ、体感重力が心なしか三倍くらい割増される。
動けば死ぬ、消される。それも消されたということすら分からないくらいの一瞬で。足をほんの僅かに動かす、ただそれだけで跡形もなくなるそんなビジョンが、何度も何度も脳裏を駆け巡る。
いつもならざけんじゃねぇぞテメェと殴りかかるところだが、それすら許さない気迫。まるで自分という存在が、目の前の同い年の男に握られているような、そんな圧迫感が心を、精神を蝕んでいく。
「ここで消えるか。俺と戦うか。二つに一つだ。選べ」
本当の意味で、冗談という概念が全くない究極の二択。
本来ならそんな二択選んでやる義理もないが、そんな義理だのなんだのが通じるような相手じゃないのは自明だ。
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