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避ければ地獄、受けても地獄。俺たちには既に逃げ場もなければ選択の余地も残されていない。まさに、理不尽。その一言に尽きた。
「……分かった。受けてやる。テメェともう一度だけ喧嘩しようじゃねぇか」
迫られた俺が下した選択。それは、妥協とも言い換えられる、最良の選択だった。
前者を選べば俺はともかく、弥平や御玲すら塵芥にされかねない。それはどうしても避けなきゃならない事案だ。そうなると自ずと選ぶべき選択肢は決まる。
でも俺は、そこで二本の指を立てた。
「ただし条件が二つある。白星は俺が持ってんだ。それぐれぇは権利があんだろ?」
「……ほう。俺に権利を主張するとは大きく出たな。まあいい。その言い分も一理ある。言え」
「一つ。これは俺とテメェのタイマンだ。他の奴らにはぜってぇ手を出すな。何があってもだ」
「下らん。お前以外の雑兵など元より興味範囲外だ。拒否する理由が無い」
「二つ。悪いが明日の午前中にしてくれねぇか。テメェのことだから知ってるだろうが、今日親父をブッ飛ばしたばっかで疲れてんだ。テメェだって、できれば俺が全快の状態でやりあいてぇだろ?」
「……ふむ。確かに。弱ったお前を倒したところで戦う意味が無いのは議論の余地もない。そんなつまらん勝利は勝利とは言わぬ」
「じゃあ、全部承諾ってことでいいか?」
「ああ」
裏鏡から殺気が弱まった。弥平と御玲が肩で息をしてるのを感じとる。横にいる御玲は汗でびっしょりに濡れていた。俺は裏鏡に再び意識を向ける。
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