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「戦う場所もこっちで決めていいよな」
「地形で俺を陥れたいのならば好きにするがいい。どこだろうと結果は同じことだ」
「見くびるなよ。テメェにそんな搦め手が通じるなら、こんな一ミリも得のない喧嘩なんざ買うかっての」
俺は負けじと睨み返す。当然裏鏡の殺気には遠く及ばないが、これは意地だ。アイツからすれば、つまんねぇミソッカス程度のものでしかないだろうが少しくらいは抵抗しねぇとただのサンドバッグでしかない。
「戦場は俺ん家の庭だ。そこならどれだけ暴れても大したことにはならねぇ。どうせお前のことだから転移してくるんだろうし、いいよな?」
「好きにしろと言っている」
俺の何の意図もないただの気遣いを冷え冷えとした一言で一蹴する。
齟齬がおこらねぇように気遣ってやってるのに、全く気遣い甲斐のない奴だ。まあ思えばコイツには何でも分かるよく分からん鏡の術があるし、ハッタリなんざ通じるワケがない。齟齬が起きようがないんだった。そう考えると、どっと疲れる。
「んじゃ、もう帰っていいか」
特にもう話すこともない。純粋に帰宅欲を満たしたいがため、早々とコイツとの会話を打ち切る。むしろこれ以上話してると頭がイカれちまいそうだ。
ただでさえ親父をぶっ殺した直後だってのに、理不尽の権化みたいな奴と付き合ってると死にたくなってくる。というか既に予定狂わされたしなにもかもほっぽり出して一日中ふて寝かましたい気分だ。
「さらばだ」
そう言い残し、まさかの俺らより先に姿をくらました。パオングが使う転移の魔法とは明らかに異なる転移で、一切の余韻を残すこともなく。
俺は奴のあまりのマイペースさに、目を何度も瞬きさせる。だが次の瞬間、弥平と御玲がぐしゃりと膝を折った。
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