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「おいどうした!?」
「すみません……気を張りすぎまして……」
御玲が顔から大量の汗をぼたぼたと滴らせる。過呼吸気味に絶えず呼吸をしているあたり、息すら止めていたんじゃないだろうか。
確かによくよく考えれば俺は塵芥にされようと生きられる自信があるが、コイツらの場合は塵芥以前にただの致命傷を食らっただけで死ぬんだ。
アイツから放たれた微動だにすることすら一切許さない莫大な殺気を前にすれば、どれだけ察しの悪いノロマでも死を悟ることはできるし、況してや一撃で死ぬ可能性が普通にあるがゆえに殺気には特別聡いこの二人ともなれば、その精神的な重圧は計り知れないものになる。
一生懸命酸素を取り入れる二人の背中を優しく撫でた。弥平は何も言わないが、御玲と同じくらいの汗をかき、絶えず酸素を肺に取り込んでいた。
「す、すまん……まさか息まで止めてるとは思ってなかった……」
「できるなら心臓の鼓動すら止めたかったくらいです……」
「いやそれは死ぬよね普通に」
「でもそれくらいしないといけないくらいの重圧でした……あんな濃密な殺気、今まで感じたことがありません……本当に、ほんの少しでも動いたら肉片も残さない。そう言い聞かせられている感じで……」
「そこらへんの感覚は言われんでも分かる……とりあえず酸素を吸うことに専念しろ。今は休め」
俺は弥平と御玲の背中を撫で続ける。二人の心臓の鼓動は、背中から伝わるくらいに激しく、速く脈動している。余程追い込まれていた証拠だ。
しばらく二人は呼吸のみに意識を向け、体の状況を整えることに専念した。その間、俺は明日のことを考える。
戦いは確かに終わった。でも言い換えれば今回の戦いが終わっても、次の戦いが待っている。
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