夏がくれば

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夏がくれば

僕たちは初夏に始まって初夏に終わった。 2度の別れを経験した。 大袈裟かもしれないが、人生の絶望を感じた。 誰よりも近い人が、誰よりも遠い人へ。 恋愛とは残酷だと21にして感じた。 僕たちの出会いはバイト先のコンビニだ。 お互い音楽が好きで、本が好きで、打ち解ける には時間がかからなかった。 「愛がなんだって映画観に行かない?」 僕が彼女に声をかけた。そして映画を観に行った。 初デートは失敗ばかりだった。 先に支払いを済ませようと思ったが財布にお金が あまり入ってなく、急いでおろしに行ったり、 チケットをあらかじめ買おうと思っていたが買えな 買ったり…とにかく失敗した。 後から聞いたら彼女はそれに気づいていて、嬉しかったと言っていた。 なんだそれ、、余計恥ずかしい、、 映画は純愛。には程遠い恋愛映画だった。 ナカハラには幸せになって欲しい…そう感じた。 そして初デートを終えて動物園に誘った。 「愛がなんだ観てたら象見たくなったから動物園行こーよ」 なんて誘い方だ。意味がわからない。 それでも彼女は誘いにのってくれた。 2度目の動物園デートの帰り、最寄駅の一つ手前の駅で告白をした。 スマホのメモ画面に、 「好きです。付き合って下さい。」 と書いたのを見せた。 彼女は照れながらも了承してくれた。 2019年5月12日のことだった。 そこから僕たちは付き合った。 付き合ってからは旅行にも行ったし、祭りにも行った。ライブやフェスにも行った。 とても充実していた。楽しかった。 今思えばすごい幸せだった。 だが一方で7月に入った辺りから喧嘩が増えていった。 そして9月も終わる頃、僕はフラれた。 理由は簡単だ。僕が重かった。 幼い頃からあまり人に頼ることをしなくて、 過去の彼女らに裏切られてきた僕は俗に言う メンヘラになっていた。それが重荷だった。 酷く絶望した。悲しみに明け暮れた。 そこから僕はおかしくなった。 沢山遊んでたくさんの後悔をした。 そんな生活を続けて3ヶ月が経った。 12月1日。インスタのストーリーに見覚えのある アカウントが足跡をつけていた。 彼女だった。 彼女は酷く後悔をしているようだった。 別れてから向こうも色々あったらしい。 彼女の日記には僕への後悔が綴られていた。 僕はそれを見て何故か彼女に連絡してしまった。 謝りたかったのか、会いたかったのか。 分からないが連絡を取ったのだ。 「もしかして、はるか?ごめんね。日記見たよ。」 すると彼女から連絡がきた。 そしてその日の夜。僕たちは会った。 お互い別れてから何があったのか、 後悔や今のこと。全て話した。 終始僕は泣いていた。 悲しかったのか、嬉しかったのか。 分からないが泣いていた。 そこから僕たちは会うようになった。 今思うと会わない方が良かったのかもしれない。 一度破れた紙は元に戻らない。 それは恋愛においても一緒なのだ。 それに気づかなかった。 その時の幸せばかりを求めていた。 それがいけなかったことに気づくのはまだ先だ。 僕たちがまた付き合うのに時間はかからなかった。 12月18日。僕たちはまた付き合った。 「もう絶対フラない。フるくらいなら死ぬ」 彼女に言われた。そうだと信じていた。 2度目の付き合いとの事もあり、喧嘩も少なく、順風満帆な恋人生活を送っていた。 4月から僕たちは社会人になることが決まっていた為、それまでは沢山会おうと約束をした。 ほぼ毎日会った。沢山電話をし、沢山話した。 それも良くなかったんだと今思う。 そして4月。僕たちは社会人になった。 会社の一員として、頑張ることを選んだ。 コロナという事もあり、僕は想像以上に忙しく、 とても大変だった。 彼女はそれでも学生の頃のようにしたいと僕に何度も訴えて、日に日に行動がエスカレートしていった。 喧嘩も沢山増えていた。 僕は彼女に疲れていた。 彼女に愛されていたかったはずなのに、 彼女に愛されて痛かった。 仕事が手につかない日が増えていった。 そして5月の終わり、初夏に僕たちはまた別れた。 彼女の自傷行為を僕が否定してしまった。 変わったねと言われた。前と違うと言われた。 僕は酷く絶望した。この世の終わりかと思った。 何度も死のうと未遂を繰り返した。 会社に行けなくなるほどの鬱になってしまった。 普通の生活を送れなくなった。 友達がとても心配をして色々気にかけてくれた。 沢山会って、沢山話した。 そんな生活が2ヶ月続いた。 心療内科に通ったり、友達と話したりして鬱ではなくなった。立ち直ることができた。 ただ、仕事はやめてしまった。 どうしても思い出してしまうのと、最寄駅を彼女が使うからだ。 よくしてもらっていた分後悔や申し訳なさがあった。 でも自分の人生だからと言い聞かせた。 今僕はどこかで歌ってたり、友達の会社の手伝いをしてなんとかぎりぎり生きている。 先のことを考えすぎていたあの頃。 先のことなんて1秒先も分かんないのになんで 先ばかり考えていたんだろう。 今思うと不思議だ。 先のことは不安だ。なんなら常に不安だ。 25には死ぬつもりだと自分で目標を立てて今を生きている。 初夏に君に出会って、初夏に君と離れる。 これから夏が来るたびに思い出すだろう。 あの頃は僕に取って青春で、楽しい出来事で。 でも最悪の出来事で、絶望する出来事で。 けれどどこか美しいあの日々を。 はるか、今君は何してる? 俺は金もなくて、愛もなくて、人生に絶望してるけど、少しは楽しく生きてるよ。 別れてから一度会ったよね。 あれ、会わない方が良かったと思う。 傷口が広がっただけだ。 もう会えないだろうし、俺のこと忘れるだろうけど、 それでもあの頃は本当にあったよ。 愛し合った日々は本当にあったよ。 俺らさ、なんでこうなったんだろうね。 バイバイ、好きだったよ。好きだよ。ごめんね。
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