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手首に星の跡が出たら人魚になれるんだ。
学生時代のくだらない空想話。
港町から引っ越してきた転校生が話していた事。
変わり者だったが笑顔が人懐っこく、クラスのみんなもすぐに仲良くなった。
私もその転校生と席が近かったためすぐに仲良くなった。
夏休みに入る前日の事。
彼女は内緒だよと言って手首を見せてきた。
「それって…。」
「そう、ついに私も人魚になれる時が来たんだ。
ね、帰りに見ていってよ。」
手を引かれバスに乗り込み、揺られる。
どこへ行くんだと聞いても彼女は笑うばかり。
目的地は岸辺だった。
彼女は制服のまま川へ飛び込む。
次の瞬間、桜色の鱗が彼女の肌に生え始めた。
「ねぇ、綺麗?」
そう微笑む彼女にゴクリと喉が鳴る。
息を呑む美しい人魚が生まれた瞬間だった。
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