11人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
神様の正体
神様始めました――なんてことを言うと多分、“頭大丈夫?”なんて言われるのが常だろう。あるいは“何かヤバい新興宗教でも始めたのか?”と別の意味で心配されそうではある。
残念ながら俺の場合、完全に間違いでもない。
唯一否定したいことがあるとするならば、その神様とやらは“俺の意思で”始めたくて始めたわけではないということである。
――あー……なんか映りわっる。ノイズもひでぇし、これ配信で使えっかなあ。
動画撮影のために少し遠方まで足を伸ばした帰り。人気ヨウチューバーとして活動している俺が、駅でリュックサックを背負い直した時その出会いは起きた。
「あの!」
突然、鈴が鳴るような可愛らしい声がしたのである。なんだ、と思って思わず振り返れば、制服姿の女子高校生が立っているではないか。清楚な長い黒髪に、足がすらっとしたなかなかの美少女。しかも目をキラキラさせながらすぐ傍でこちらを見上げている始末。
なんだこれ、どこのラブコメ漫画だ――あっけに取られている俺に、彼女は告げたのである。
「貴方……貴方だったのですね!」
「は?」
「貴方が、私の神様だったんですね!お会い出来て光栄ですっ」
「はあ!?」
それが彼女、小野田文歌との出会いだった。お嬢様学校として名高い晴嵐女子高校に通う高校二年生、文芸部所属。ついでに、去年ミス晴嵐女子に選ばれたほどの最高級レベルの可愛い子ちゃん。
声をかけられて全く悪い気はしない相手であったのだが、それでも驚くなという方が無理があるだろう。
なんせ突然俺は、この天から降ってきたような美少女の“神様”を始めることになったのだから。
最初のコメントを投稿しよう!