神様の正体

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 ***  俺は神様なんかじゃなくて、普通の人間だ。何か誤解しているぞ――ということは何度も説明した。しかしそのたびに彼女は首を振って、“謙遜しなくていいですよ、私にはちゃんとわかってるんで!”とニコニコ笑うばかりである。  晴嵐女子高校と言えば、偏差値の高さでも有名なはずだ。けして頭は悪くないだろうに、彼女はどうにもアレな幻覚でも自分に見てしまっているらしい。自分のようにイケメンでもなんでもない(幸いブサメンというほどでもないようだが)、地味で目立たない童顔の男に一体何を見出してしまったのやら。  確かであることは、彼女は俺が人気ヨウチューバーと知って声をかけてきたわけではないということ。ヨウチューブの動画で稼ぐようになって数年になるが、それでもずっと顔は一切出さないやり方を貫いている。いろんなオカルトスポットをめぐって動画を撮影し、声のみで解説を入れていくというやり方がメインだ。少々危ない場所にも踏み込むので時折炎上もするが、基本的に声と手(場合によっては足)くらいしか動画には出てこないのでそうそう特定されることもないはずである。 ――俺、自分の容姿嫌いだったけど。今回ばかりはラッキーだったかもしれねーわ。  制服を着た可憐な女子高校生と一緒にいるなどしたら、場合によってはやばいサービスなんかを疑われる心配もあるわけだが(勿論、未成年を搾取するようなサービスを受けたら逮捕されるのは大人の方である)。今回ばかりは、俺の童顔が役に立っていると言わざるをえない。  大学生である俺だが、多分彼女の横に並んでも、外見年齢だけ見れば年の差があるようには見えないだろう。コンビニでビールを買うたび、胡散臭そうに免許証と顔を見比べられるような俺である。同年代の友達、か何かだと周囲に見られるならそれに越したことはなかった。せっかくゲットした美少女、普通にデートの一つもできるに越したことはないのだから。 「えっと、文歌ちゃん」 「はい!」 「何で、俺が君の神様なわけ?」  行きつけのカフェで、彼女に今日も同じ問いをする。俺が奢ったカフェオレを、それはそれは美味しそうに飲む彼女。見ているだけで眼福なのは間違いないが。  その問いに返ってくる答えは、いつも決まっているのである。 「神様は、神様ですよ。私にはわかるんです!」  結局、理由が理由になっていないのだ。  まあ、カノジョいない歴=年齢の淋しい男としては、こんな美少女とタダで話せるだけ何でもいいといえばいい。怪しい宗教の教祖のように扱われるのは、少し納得がいかないけれど。
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