神様の正体

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 ***  彼女はけして自分のことをは話さない人間ではなかったが、それよりも俺の話をとにかく聞きたがるタイプだった。  俺達の謎の“デート(?)”は基本的に、カフェやカラオケでお喋りするような健全なものだけで終わっている。彼女の家の住所も聞いたし俺の家の住所も伝えたが、お互いの家に行くような雰囲気には何故かならないからというのが大きかった。動画を撮影するために多少危ない橋も渡る俺であるが、だからといって女の子相手に酷いことをしたいなどとは思わない。相手がまだ可愛い女子高校生なら尚更である。彼女は自分に全力で好意を伝えてくれているが、それでも一線を踏み越えるのはもう少し先にしようと思っていた。  今は手をつないで、お喋りするだけで充分幸せである。なんせ彼女は可愛いし、話し上手で聞き上手だ。一緒にいるだけでこんなにも幸せな気持ちになれる相手に出会える時が来ようは、少し前の自分ならば夢にも思わなかったことである。炎上スレスレのオカルト動画で荒稼ぎしているような俺の人生にも、ようやくツキが巡ってきたと言えるのかもしれない。 「禁足地、みたいなさ。絶対入っちゃいけないと言われてる場所って、基本的にみんな本当は入ってみたくて仕方ないんだよ」  その日も俺は、公園脇の道を歩きながら彼女に解説していた。 「でも叱られたくないし、祟られるのも怖い。だからみんな入りたくても入れない。本当は、中がどうなっているかはすっごく知りたいのに。……だから、俺はそういうみんなの望みを叶える動画を撮影して、ヨウチューブにアップしているっていうわけだな」 「オカルトスポットを巡っているのは、そういう理由なんですね?」 「そうそう。自分で行けないみんなの代わりに俺が行って、そこがどうなっているのか解説するんだ。だから俺の動画は閲覧数が伸びる。しかも、その動画が生配信じゃなくて無事にアップされている時点で、俺がその場所に行って無事に家に帰ってきたことの証明だろ?最後に本気で怖いことになんかならないって、動画になった時点で証明されてる。みんな安心して、俺のオカルト動画を見ることができるってわけだな」  生配信などをした方が売れるケースもあるのは百も承知だが、それでも俺が生放送をやらない最大の理由はそこにあるのだった。  最終的に家にきちんと戻ってきているなら、こいつがやったのはそこまで危ないことではない。だからそれを応援している自分達も悪いことなんかしていない――視聴者にそんな安心感と言い訳を与えるのも、自分の大切な仕事であるからである。
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