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目が覚めると既に日は高くは昇り、朝と呼ぶには似つかわしくない時間になっていた。慌ててリビングに行くと既に健志さんがコーヒーを飲みながらくつろいでいる。
「おはようございます」
ふと見ると、窓際に新聞紙が敷かれその上に私のバッグが濡れた状態で置いてあった。
「おはよう。よく眠れたみたいだね。このバッグ優さんのでいいのかな?勝手に開けるのもどうかと思って確認していないんだけど」
「はい、私のです。見つけて下さってありがとうございます」
健志さんは、なんて優しいのだろう。
わざわざ海岸まで行ってバッグを見つけて来てくれたのかと思うと胸が熱くなる。
バッグの中身を確認すると全てが水を吸ってしまっていて、スマホや化粧品はダメになってしまっていたが、お財布の中身はそっくりそのまま残っていた。
私は、安堵もしたが何故だか残念にも思い、不思議な感情に戸惑う。
タマが足元にすり寄ってきた。
「タマおはよう」
声を掛けると私の顔をジッと見つめ挨拶は済んだとばかりにひらりと健志さんの膝の上に移動して甘えた仕草をみせる。
健志さんの手が優しくタマを撫でているのを羨望の眼差しで見つめた。
”あの手にもう一度撫でて貰いたい”
出会ったばかりの人にこんな想いを抱くなんて………。
もう帰らないと、
健志さんにこれ以上迷惑を掛ける前に
健志さんにこれ以上おかしな気持ちを抱く前に
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