その手が

13/18
前へ
/18ページ
次へ
「優さん、予定がないならゆっくりしていくといいよ。気兼ねはいらないよ。 ここは、僕と猫しかいないしね」 健志さんがいたずらっぽく笑う。 不思議な人。 ここは、ゆったりと空気が流れている。 健志さんの柔らかい雰囲気がここの空気を作っている。 心地良い。 健志さんがタマにブラシを掛けている。 タマは気持ちよさそうに目を細めゴロゴロと喉をならしていた。 「私も猫になって撫でてもらいたい」 私は、ハッとした。 そんな事を言うつもりが無かったのに思わず口に出してしまった。 どうしよう、変な女だと思ったに違いない。 健志さんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になって 「いいよ、ここにおいで」とソファーの横をポンポンと叩いた。 私は、おずおずと横に座り恥ずかしさで俯く そして、健志さんの手が私の頭を撫で始めた。 健志さんの手が私を撫でる。気持ちいい。 不思議な手、心が蕩ける。 癒しの手。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加