0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
私が泣いた理由が、
【私が泣いた理由 コンテスト応募作品】
部屋の隅、中古で買った古いスピーカーから、アップルミュージックのプレイリストが流れている。
私はその音を聞きながら、どうしてこうなっちゃったのかを考えてる。
昨日の夜、行きずりの男とセックスした。
理由なんてなかった。ただ、したい、と思ったから、しただけ。
その男とはバーで出会った。
目は薄く、はばひろの二重で重だるそうなかんじ。
髪も私好みの、男にしては少し長くて、ウェーブがかかっていた。天然なのか、わざとかけているのか、私は知らなかったけれど。
唇も薄かった。何もかも、「完璧」だった。
ベッドの後、彼はタバコを吸った。20点。
一口に吸う勢いが早かった。40点。
愛のないキスを、私の頭にした。90点。
終わると私より先にシャワーを浴びた。100点。
ねぇ、どうしてこんなになっちゃったんだろう?
ぽろりと溢れてるなみだを拭ってくれる人も、疑問に答えてくれる人も、居ない。もう、いない。
ああ、私が泣く理由が、私だけで完結するものだったら、よかったのに。
End
最初のコメントを投稿しよう!