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青年は、ジャズが好きだった。会うといつも気に入ったジャズミュージシャンのライブ動画を見せてくれた。
少女は、もう少女ではないかもしれない。恋が、ふしだらな要素を含んでいることを少女は知っていた。
青年は、少女が女性である認識を高めるのに十分なクールで色気のある声色をもっていた。
「人って、相手の声質と話し方の特徴に80パーセント以上依存してるんだ」
彼はそう言った。彼の言う通り少女であった女性は、過去に付き合った男性の容姿ではなく、声質と話し方に恋していたのだと理解できた。
人と人とが出会うとき、最初に接する容姿が好感度に関わる確率は20パーセント以下。嘘のようで本当のこと。そう思ってしまったのかもしれない。それほど彼の声質と話し方は『沼』だった。
その年の夏の終わり、少女であった女性は少女ではなくなった。
傷つけ合い、奪い合い、束縛し合う2人の関係は、その年の冬まで続いたけれど、新しい何かを生み出すことはなかった。
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