EP.6 人のうわさはいつまでも続く

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 哲は眉をひそめた。当然だろう。  長い間一緒にやってきた瑠璃と、今から一緒にやっていく皐月とでは、その実力も経験も雲泥の差だ。  哲はいぶかし気に尋ねる。 「それを、瑠璃自身が嫌がるとは思わないのか?」  哲の質問に、皐月は答えられないまま目を伏せる。  瑠璃はこの仕事を肯定的に捉えている。自分から事件に携わろうとする口だ。瑠璃本人を説得して、行かないように伝えても、決して聞き入れないことはわかっていた。 「俺が瑠璃を呼び出さなくなったら、当然、瑠璃が現場に出る機会は少なくなる。危険な目にあうことも少なくはなるだろうさ」  厳しく、しっかりとした口調だ。皐月を見つめるその瞳は真剣だった。 「そのぶん、本来瑠璃がやるべき仕事を皐月が奪うことになる。これからの経験を奪うことになる。経験で培うべき技術も直感も、全部奪うんだ。瑠璃から奪った分だけ、おまえは瑠璃を守らなければいけない。その提案をしたのはおまえだからな」  三美神と行動するのをやめたからといって、殺人鬼から顔を忘れられることはない。むしろ活躍した話を聞かなければ、ここぞとばかりに狙われる。はたして活動をひかえている瑠璃が、突然の襲撃に対応できるかどうか。 「それは覚悟してるんだろうな? まさかただの同情で言ってるわけでもないだろう? 三美神の傘下に入ったら、フェードアウトすらできないんだ。まさか、そのまま瑠璃が辞められるとでも思っているのか? 」
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