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突き刺すような冷たい声。
「そうやってすぐしゃべろうとするなんて、信用できない。適当なこと言って逃れようってのが見え透いてるね。そんなやつに、大事な情報は流さないと思うよ」
「そんな……あたしは、本当のことを話すよ。だから……」
「どうでもいいんだってば」
女を見下ろす和也の瞳はどす黒い。本当に殺すつもりなのだと、あきらめざるを得なかった。死の恐怖に直面した女の体は、がたがたと震え始める。
和也の口から放たれる声は、相も変わらず無機質だ。
「裏に関する情報についてはおまけで手にはいれば十分。僕たちの仕事は殺人鬼を殺すこと。不特定多数の人間が死ぬような犯罪者を、殺すこと」
レイピアの切っ先が、女の頬にあてがわれる。
「何より、皐月に手を出そうとした罪は重いよ。言ったでしょう? 見逃してあげないって。例えあなたが、今から何をしようと、絶対に許してあげない」
和也の顔には、徐々に心酔しきった笑みが浮かんでくる。美しく、気味の悪い笑みだった。興奮を抑えがたいようすで、息を吐く。
「兄さんからは、ちゃんと許可をもらってる。和也の好きにしていいって」
唇を指先でなでながら、楽しそうに言う。
「そうだな……。見せしめになるようにしよう。肉片が残らないようなことはしない。顔はそのままにして……変態が喜ぶような体にして売り飛ばしてあげよう」
和也は笑顔のまま、レイピアを逆手に持って振り上げる。
女は、自分の命に終わりを告げた。いや、違う。終わるのは、人間としての生、だ。
「これなら十分、三美神には手を出すなって牽制になるよね、健一くん」
笑顔の和也に、健一も柔らかい笑みを浮かべた。
「ああ……十分すぎるくらいだろ」
女の体に、レイピアが振りおろされる。
女がどのような体になって、どこへつれていかれるのか、これから知る由はない。
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