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†
「皐月」
哲は皐月に脇差を返した。皐月は受け取った脇差を見つめる。
哀愁のある、はかなげな声が静かに響いた。
「皐月のことは俺たちが守ってやる。形だけでも、瑠璃と同じ立場になるのなら」
瑠璃と同じ立場。それは今後三美神のもとで一緒に行動することを意味している。無理やり捜査に参加させるような強制力はないし、必ずしも誰かを殺す必要はない。しかし今までよりも、誰かに襲われる機会は増える。そのぶん、誰かを殺すことはあるだろうし、死体を目にすることもあるだろう。
「おまえはそもそも、俺たちと一緒に行動すること自体、不本意なことだろうし。本当は嫌だってこともわかってる。でもすでにおまえの顔は全国に知れ渡っているから、いつ殺人鬼に手を出されるか知れたもんじゃない。」
皐月は受け取った脇差をぎゅっと握る。言われなくてもわかっていた。皐月には、これしか選択肢がない、ということを。
あの女のような人間が、これからも接触してくるのだ。三美神の後ろ盾なしではいくら命があっても足りない。
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