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「皐月が俺たちのそばにいてくれないと、守ってやるのも難しくなるんだ。もちろん生活は今まで通り、とはいかない。おまえの立場は三美神に近い存在として、国に厳重に管理される。自衛のための武器の所持は義務になるし、マスコミの報道も規制されないから振る舞いには気をつけなければならない」
一度この世界に踏み込んでしまったら、もう後戻りはできない。普通の生活を送ることなど無理だ。
皐月は静かに尋ねる。
「どうせ、拒否権はないのでしょう?」
哲は短く息をついて、うなずいた。
「……約束する。三美神は皐月に何かあったらすぐに駆け付ける。絶対に、あんなやつに殺させたりしない」
「でも、守ってもらうばかりじゃいけませんよね。こうなった以上は」
必要最低限、自分の身を守る技術は絶対に身につけておかねばならない。今回のような火事場のバカ力が、いつも通じるとは限らないだろう。
襲われそうになったら、その都度自分で対処できるようになったほうが良い。
哲はしばらく目を伏せて考え込み、冷静に言う。
「……大丈夫。基礎はできてる。剣道の有段者は伊達じゃないってことだな」
皐月は哲をじっと見つめるだけで何の反応もしない。
「殺そうとしなくていい。あくまで自衛だ。自分の身を守れるほどの力があればいい。和也のマネをしろ、だなんて言うつもりはない。皐月に人を殺すような命令は出さない」
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