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言葉尻に、ぴりりとした威圧を感じさせた。別に三美神が無理やり引き留めているわけではない。辞められないのだ。辞めるには、あまりにも敵が多く、デメリットが大きい。
「わかってます。辞めさせることはできないって。瑠璃ちゃんも、きっと辞めたがらない。俺もまだ、強いとは言えないし……。でも、もし、何かあって、いなくなることのほうが、嫌だから……」
哲は顔をゆがませた。瑠璃を守りたいのなら。瑠璃に傷ついてほしくないのなら。むしろ皐月と同じように三美神のそばにいさせたほうが良いはずだ。
皐月がやりたがっていることは、小鳥を陳腐なかごの中に閉じ込めるようなものだった。それは決して安全ではない。いくらでも天敵に見つかり、狙われる。かごを壊されることだってあるかもしれない。
哲は目を伏せる。
「……わかった」
哲の口から、静かな声が放たれる。
「俺からは極力連絡しないようにするし、上からの瑠璃指名の依頼も断る。……これが限界だ」
それでも皐月にとっては十分だ。哲は難しい顔をしながら、話を続ける。
「あいつは自分から事件の捜査をやりたがるし、処刑だって積極的にやる。あいつが自分から事件に首を突っ込むのなら、それを俺たちが止めることは難しい」
できないこともないが、難しいのだ。
瑠璃はたとえ三美神から現場に出るなと言われたところで、聞くことはない。自分が関わったなら最後までやり通す質だ。
哲が言ったとおり、「連絡しない」「指名を断る」が一番妥当な対処法だろう。
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