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ゆきの心臓の鼓動が早くなる。嫌な脂汗が、顔ににじみだした。
編集長にこんなことをさせているのだ。やはり記事に問題があったとしか思えない。まさかこんなに大ごとになるとは思ってもみなかった。
ふと、哲の顔に笑みが浮かぶ。視線を編集長に向けて、口を開いた。
「一体いつまでそうされているのですか? 編集長」
哲の言葉は外には聞こえない。もちろん、編集長の声も。
「……申し訳ございません」
編集長の声は、震えていた。哲は艶やかに笑う。
「編集長がずうっとその体制でいらっしゃるものですから、俺も思わず偉そうな態度になってしまうじゃないですか」
声はあくまで穏やかだ。しかし編集長はいまだに頭を上げられないでいる。
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