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「記事はすぐにでも差し替えます。ネットニュースも取り下げます。ですからどうか、怒りをお鎮めになってください」
「大丈夫ですよ、怒ってませんって。それに」
一気に室内は重苦しい空気に包まれる。
「そんなことをされても、もう間に合わないんですよね」
編集長の体がぶるぶると震えていた。哲はにっこりと笑みを浮かべている。
「記事に出てた彼は好青年でね。……事件に巻き込まれていたのを三美神が助けて、そのお礼にって、ちょっとばかり手伝ってもらってただけなんですよ? ……決して三美神の後継者なんかじゃなかったし、我々もそのつもりではなかったんですが……」
「うちの者が大変申し訳ございません……!」
編集長の謝罪が、大きく響く。哲はわざとらしいため息をついた。
「あんな記事が出てしまったものだから、彼、散々な目にあったんですよ? さっそく命を狙われて。俺がたまたま近くにいなかったらどうなっていたことか……」
編集長の呼吸が乱れる。哲から降り注がれる威圧が苦しいのだろう。この場にいれば誰だって、あまりの重圧に押しつぶされてしまうはずだ。
「これからも彼は襲われ続けるでしょうねぇ。いろんな人に顔が知られたんですから。御三家の人間とはいえ、普通の善良な青年だったというのに。あの記事のせいで普通の生活もままならなくなった」
ひしひしと、痛いくらいの視線が、編集長にそそがれる。
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