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「正直なところ、彼はそもそも、裏社会に名前が広まりつつあったんです。初めて彼を助けたころから、じわじわと、ね。こんな事態にならずとも、遅かれ早かれ狙われることにはなったでしょう。あの記事が出たことで、本人の中にようやく適当な危機感が芽生えたことは、良いことだと思います」
「そう……ですか」
力のない返事。哲に対して何をされるかわからない恐怖は抜けない。
「だからといってそちらの記事を許すつもりはありませんけどね」
編集長の体がびくりと震える。その反応に、哲はあきれたように言った。
「ああ、もう土下座はなしですよ。もう見飽きたので」
謝罪をされたところで、広まった記事の内容は取り戻せない。だからこそ、文句の一つは言っておきたいものだ。たとえそれが無駄に終わったとしても。
「別にね、三美神のことを好き勝手書いていただいて構わないんですよ。最低限規制されている以外のことでしたら、なんでも」
編集長に向けられた哲の目つきが、鋭いものに変わる。
「ただ、三美神の脅威につながるようなネタを軽々しくのせるのは違うでしょう。これは立派な、規則違反です。おたくはこれで……何度目でしたっけ? そのせいで会社が危険な状況になったこともあったでしょう? 」
再び、編集長にじわりじわりと威圧がのしかかる。
「……はい。申し訳ございませんでした」
編集長はぎこちなく首を垂れた。
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