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哲よりも冷淡で、哲よりも強い殺気。
女は、本能で敵わないことを悟る。恐怖におののきながらゆっくりと後ろに下がった。
「わ、私を殺したら、ボスが黙っちゃいないよ? あたしのボス、知ってるだろう? そ、それに……あたしはあんたの息子を殺しちゃいないよ」
尻の上に、何かがのせられた。もう、後ろに下がることができない。後ろから、くだけた口調の男の声が落ちてきた。
「ボスだって、皐月にやられてすごすご戻ってくるようなやつ、いらないんじゃねえか? 」
女の尻に片足を乗せた健一は、いたずらっぽく笑った。
「そういや、あんた、またあこぎな商売してるって? 人殺し真っ最中のテープが、闇市場に出回ってるって聞いたけど? ん? 」
「そんなこと、僕には関係ない」
和也がレイピアを抜き、女に近付く。
「僕にとって大事なのは、この人が皐月を殺そうとしたってこと」
「ま、待って!」
女は声を張り上げる。和也の動きがぴたりと止まった。
「話す!話すから! あたしが関わった事件のこと全部。あたしに指示してきたやつのことも、関わってるやつのことも話すから」
後ろにいる健一が悩まし気に言う。
「うーん……それはそれで気になるけど。別にそこまで知りたいってわけじゃ」
「どうでもいいよ」
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