#1 光

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#1 光

この身体は私のものじゃ無い。 作りかえて、見た目が変わっても、 心が強くは…なれなかった… 醜くて弱虫で泣き虫な私は誰にも理解されない。 どうして、みんな、… 私を虐めるの? “京極家”だからこそ、付き纏う影に気づいた時、 自分の運命を呪った。 全部、全部、全部… 仕組まれていたことに… やっと気づいた時には手遅れだった。 … 夏休みが終わりに近づく… 涼しげに鳴る風鈴に会えるのは今日が最後かな… 「…ゆかり?」 黒いスーツに黒い髪、そこには別人のような 鷹左右春輝が居た。 変わってきた彼を… もうこれ以上巻き込みたくは無い。 どうしたらいいのか、ここまできて、 助けて欲しいなどと言えるものか。 苦しくて吐き気がした。 「…春輝、今日で会うのは最後です」 それを聞いて、彼は怪訝な顔をした。 でも私の事情もわかるからだろう… 「そっか」と一言呟いて私の隣に座った。 「…何処行くつもり?」 「いえません」 春輝の回答に即座に返答をした、 もう巻き込みたく無いから、 お願いだから、 何も聞かないで。 「ゆかりさ、…俺の地雷踏みすぎ」 わかっている、彼が好きだった彼女は… 1人で辛い思いを抱えながらこの世を去った。 今私は繰り返そうとしてる。 何も言えずに、… 何も託さず… 消えてしまいたかった。 … 暑い夏の日、私達は“水族館”に遊びに来た。 中学時代虐められていた私を救ってくれたのは 春輝だった。 毎日ゲームをしたり、お菓子を食べたり、 もち子さんの所で騒いだり、不良に喧嘩を売ったり…馬鹿みたいなことだったのかもしれない。 でも開放的で毎日が楽しかった。 そんなある時…私は公園で1人の泣いてる女の子に出会う。 彼女は手が血だらけで無数の傷を負っていた。 治療してあげようとすると「やめて!!」なんて、 私を引っ叩いた。 親切をしてあげてるのに… この子は何故こんな嫌がるのか… 「どこか痛いなら、診てあげるから教えて?」 「痛いよ…痛いけどわからないの」 女の子が蹲って私が困っていると、 不意に私の隣に春輝が現れて、 彼女を抱きしめた。 「痛いの痛いの飛んでけ〜」 そう言って頭を撫でてあげていた。 暫くして、彼女は泣き止むと… 「痛くない」 そう言った。 心なんだ、彼女が痛かったのは…心… 私は気づいてあげられなかった。 やっぱり… 春輝には不思議な力があるように感じる。 昔から女の子でも男の子でも、彼の近くにいる人はみんな穏やかで楽しそうな… そんな顔をしてる人ばかりだった。 確かに喧嘩もする、でも… そこにも理由がしっかりあった。 無闇に暴力を振るってるわけじゃない、 特に、兄の夏月と一緒の時と… 1人でいるときの春輝は別人のようだった。 夏月の後ろに隠れ、傷だらけになってる時より、 困ってる人に手を差し伸べる姿が印象的だった。 でもある時、私のせいで… 春輝を深く傷つけてしまう。 … 私達3人は毎日楽しく遊んでいた。 時折 彼女は苦しそうに泣いたりする日もあれば、 「死にたい」「辛い」「もう嫌だ」と何度も口にしていたのに… 春輝が傍に居ると、 嬉しそうに笑って、甘えて、 「生きたい」「楽しい」「一緒に居て?」と… 春輝にくっついて幸せそうにしていた。 “依存”2人を結びつけてるのは依存だと思う。 それに彼女から「はるくんが好き」そう聞いて、 特定の恋人を作らない春輝には重いものだと… 私はそう思ってた。 決まって彼女が不安定になる日は、 春輝が他の女の子と遊ぶ日。 不安定になれば春輝は必ず駆けつけて来ていたし、 …このままだと、春輝は彼女だけのものになってしまうのでは無いか… それに春輝は耐えられるのだろうか…? 特定の恋人は作りたくないと聞いていた。 だから、不安ばかりが募っていた。 そんな事を思っていたある日、 突然彼女は春輝に冷たくし始めた。 あんなに甘えていたのに… 好きって言っていたのに… どうして? すると逆に春輝が怒るようになった、 滅多に見る事が無かった感情だと思う。 … そして、 聞いてしまった… 聞くつもりじゃ無かったのに 「俺、お前のこと好きだから絶対離してやんない」 盗み聞きとか、良くなかっただろうけど… 思わず緊張が走った。 告白…なんだろうか…? 好きにもいろいろあるから、 ちょっとわからないが… そんな風に女の子に言う春輝は珍しかったし… おそらく、 “依存”だ…春輝も彼女に依存してるんだ。 「何言ってるの?私達釣り合わないよ」 「逃げるなよ、何処にも行かせねぇから」 「やめてよ!!!!…怖い!!」 急にガタンッと物音がして、 居てもたってもいられず私は飛び出した。 「何してるの!!!?」 私が割って入ると、 「…帰るね…」 そう言って彼女は逃げるように走っていった。 理由が全くわからない。 だって…おかしいよ…本当は2人とも… 好き同士の筈でしょ?なんで? 「もうわかんねぇよ、女ってわかんねぇ!!!」 春輝が苛立って近くにあったコップを壁に投げつけるとグラスが割れる。 違う気がするの。 きっと何か理由がある筈。 私はすぐに彼女に連絡を入れた。 『みんなで水族館に行こうよ。』 そうすると、 「行きたい、はるくんに謝りたい」 そう返事が来て安心した。 大丈夫、きっとなにか理由があっただけだ。 釣り合わないって臆病になるのは仕方ないけど、 恋や愛はそんな深く考えるものじゃない。 “好き”って気持ちがあるなら… 傍にいればいいのに。 それは私が引き起こした… 浅はかな考えだと…その時は知らずにいた。 『ゆかり、早く戻って来なさい』 水族館へ行く朝、お父様から連絡があった。 『帰りません、もう家には帰りませんから』 そう言った後に何故かお父様が笑い出す。 気持ちが悪かった。 『残念だ』 ただそれだけ言われて切られる… 気持ちが悪い。 滅多に電話なんてして来ない忙しい人が何故? なんだか気持ちが落ち着かないまま、 水族館へ向かった。 先に来ていた春輝と彼女はいつも通りくっついていて…仲直りしたのか…まるで恋人同士のように、 私の前でも仲良さそうにしていた。 春輝がチケットを買いに行ってくれてる間に、 「付き合うことにしたの?」 なんて聞くと、「まだしてないよ」なんて彼女が笑うから私まで笑顔になっていた。 これから告白するのかな? 水族館を回りながら3人ではしゃいでいた。 楽しい。 やっぱり、2人といられる時間が楽しい。 付き合ってしまっても、私と遊んで欲しいな。 そんな風に考えていた。 遊び疲れた夕方の帰り道… 横断歩道の前で立ち止まった。 「なんか食べてく?」 春輝が不意に声をかけてきて、 そろそろ2人っきりにしようと 「私は帰るわね」 なんて気を使ってみる。 「ごめんね」なんて彼女に耳打ちされ、 顔が少し赤くなってるところを見ると… やっと今日…2人はお互い歩み寄れる気がしていた。 きっと2人ならずっと幸せになれる。 そんな気がしていたの。 依存からの愛だって悪くないだろうから… 応援したかった。 「そっか、じゃあ行くね」 春輝の言葉を聞いて私は背を向けて、家に帰ろうとしたほんの数秒の事… クラクションの音と人々の悲鳴とガラスの割れるような音、鈍いぶつかる音… ………… 嘘だと言って…? 振り向くとそこに… 2人が重なり合って倒れる姿があった… 血の海…やめて、やめてよ… 私は走り出して即座に2人の呼吸を確かめる。 大丈夫、生きてる。 「早く!!!早く救急車!!!!!!」 私は近くにいた知らない人に叫んだ。 叫んだ後ひと呼吸ついて、直ぐに手当てをする。 大丈夫助かる、助ける。 私がなんとかする、怖がるな。 私は医者なの。 身体中の細胞が冷えていくような気持ちを奮い立たせながら、強く心で言い聞かせた。 絶対死なせない。 救急車が来て搬送中必死に2人の処置をする。 集中治療室に運ばれ、 やっと安心できる、 ここまでくれば誰かが必ずついてくれる… 2人は助かる。 …そう思っていたのに、治療室に居たのは… 「お父様…」 ずっと半年ぐらい顔も合わせてこなかった、 父の姿がそこにあった。 「選びなさい、もうこの状態じゃどちらかしか救えない…」 「そんなはず…」 「お前がやるんだ」 その瞬間、治療室に私は閉じ込められた。 嘘だ、嘘でしょ。 選べるわけ無い。 2人とも大事なの、だったらいっそ私を殺してよ… 私なんかいらない、私より2人を… 2人を助けてよ!!!!! 苦しくて、悔しくて、扉を必死に叩きながら、 涙を流し続けた。 …まだ諦めちゃ駄目。 向き直って2人の治療を始める。 怖い、わからない、なんだっけ… 私が…私が勉強を怠ったから… 医学について学ぶのを放棄したから? だから…だからなの? わからない、どうしよう。 その瞬間、私の手を彼女が握った。 「ゆかりちゃん、…はるくんを宜しくね」 彼女が目の前で自殺した瞬間、 私は貧血を起こした。 悪夢から逃れたかったのかもしれない。 全部なかったことにしたかったのかもしれない。 夢だったら良かったのに。 ハッと目が覚めると、 隣のベッドに春輝が寝ていた…息を…してる? ちゃんと治療もされてる。 私あれから… 「医者の娘が貧血で倒れるなどと、恥さらしが」 目の前に現れた父に現実だったことを思い知る。 「どうして…」 嫌な予感がした。 ここってもしかして、父の経営する病院の一つ… そうじゃなければ、私にあんな仕打ち出来るわけが無い。 「全く、人1人も救えないなんて、せっかく与えたチャンスだと言うのに」 笑顔の父を見て嫌悪感に身体中が奮い立った。 殺したいくらい憎い。 この人は、頭のネジが狂ってる。 「ゆかり、もう誰も死んで欲しく無いというのなら学びなさい、私の為に学び、強くなりなさい」 「…全部仕組んだのですか?」 「そうだと言ったら。」 …私の所為…? ごめんなさい、ごめんなさい…ごめんなさい… 急に溢れた涙が止まらなくなった。 もし私が強ければ、 もし私が2人を救えれば、 そもそも、私が2人と出会わなければ。 …もう辞めよう、友達も要らない。 私は、私はだって… 京極の人間なんだもの。 虐めなんて初めから怖くなったじゃない。 ちょっとだけ、楽しいことを知っちゃったから、 楽しい事に逃げちゃっただけ。 だから、だからもう、 もう失敗したくない。 強くならなきゃ、1人でも強くならなきゃ。 誰も死んで欲しくない。 「早く戻ってきなさい」 「わかりました」 … 「ふざけんなよ」 突然声がした、春輝の…強く言った一言が私の心に深く刺さる。 「ゆかりは…悪くねぇ、…この、クソ野郎」 辛そうな声で私は涙が溢れるのが止まらなかった。 もう何も言わないで。 お願いだから。 「鷹左右組の息子だから殺さないでおいたのだが、君がそんなに死にたいなら」 「やめてください、春輝は関係ありません」 「冗談だよ」 父はそれだけ言って去っていった。 「ゆかり」 まだ起き上がれない春輝の傍に行く… 私の腕を掴んで「行くなよ」と言ってくれた。 惑わされちゃ駄目。 もうこれ以上は、迷惑かけられない。 「ごめんなさい」 私は春輝を残して病室を去る。 後に父から、彼女を脅していたという事実を聞かされる。 “京極ゆかりや鷹左右春輝と付き合えばお前を殺す”そういった脅しだった。 だから、彼女が私達から離れようとした、 冷たくなったんだ… 全部、私の所為。 それは、 中学を卒業して高校に上がる… そんな時期に起きた最悪な春休みだった。 … それから、ずっと努力した、 高校1年生から3年生に上がるまで… 必死で勉強をした。 学年1位を取るのは難しくて、 何度も何度も父に叱られ殴られた。 同時に医学の勉強をした、 率先して休みの日は治療を行う。 医師免許もない私が行うにはまだ早いだろう事を 平気で父は教えた。 頭が痛かった。 毎日繰り返し悪夢を見ていた。 もう嫌だ。 ふと、学校で周りを見渡せば… どこか違う世界の人ばかりで。 何故私はそちら側にいけないのか。 いきたい、私も遊びたい。 仲間に入れてほしい。 無理矢理笑顔を作って誤魔化して、 あまり深く話さないように、 当たり障りなく…生きようとした。 隠してしまおう。 全部。 私は強いから、 強くなければいけないから。 高2に上がると春輝が同じ志騎高に入学してきた。 お互いあれから避けるように連絡してこなかった。 でも急に、私の前に春輝が来て言った。 「お前のことは一生許さねぇ…」 どうしてなのか、その時は理解できなかった。 私が家に歯向かえなかったから? 彼女が死んでしまったから? 私が力不足だったから? でも今ならわかる… 1人にしてごめんなさい。 あの時、もっと会話すれば良かった。 全部私が悪いんだって逃げたから。 だから怒っていたんだと、 ようやく気付いた。 春輝は自分意外の人に対して、 いつも優しいから、 私は憧れていた、 なりたい、春輝のようになれたら… 男の子だったらまた違ったのかな。 … もし私が本当にやりたいことを、 自ら進んでできる時が来たら、 この心の中にずっと閉じ込めていた剣を、 抜く事が出来るのかな。 醜い顔も、醜い姿も、 性格も、人格も、 あの時、 全部変えられてしまったけれど、 ひとつだけ変わらなかったものがある。 ずっとずっと、 なりたかった… 誰かの「光」に  … 失敗してしまった、 だから、後は全て任せます。 愛もいらない、 友達も、 親友もいらない、 本当に欲しかったのは、 対等に渡り合えて、分かり合える、 宿敵のような人だって、 ようやく気付いた。 もち子さんに話していた… 本当の夢を叶えたい。 本当にやりたかったことを、 最後にやっておきたい。 …… 「檀一郎と水族館に行ったのは、嫌がらせ?」 「違います」 きっと腹を立てていたとは思った。 でも、これだけは言いたかった。 「過去と別れを告げようと思ったの…そうしなければ前には進めないから」 「…ねぇ、見てよ」 不意に手を差し出された。 黒い指輪が無い。 あれは唯一彼女から貰った大切なものの筈。 「俺もうさ、過去はいらない…ゆかりだけだよ、ずっと前に進めてないのは」 悔しいがその通りだった。 怖いんだ。 繰り返すのが怖い。 もう同じことは起こしたく無い。 だからこそ今変わる時なんだ。 「そうね、…でも聞いて…私、家を飛び出してきたの」 そう言った瞬間、春輝が驚いた顔をした。 どうだ、やってやったぞ… みたいな… そんな気持ちだった。 でも行く場所など無い、 このまま彷徨って死んでしまうかも。 学校には行けない。 退学届を出されているかもしれない。 「…家に呼びたいのは山々だけど、来ないよな?」 「いきませんね」 私の性格もわかっているからこそだろう。 昔から人の家が苦手だ。 気を使いすぎるのも時に疲れるから… なんて、本当は内心遊びに行きたいと思っていた。 でも、真意がわからない以上 誰かには甘えたくない。 もしかしたら、殺されるのかもしれない。 だったら、いっそ… 「死のうとしてる?」 …見透かされていた。 自殺したい。 もう疲れた、もうなにもかも、 辞めてしまいたい。 「師匠が怒るよね。」 「そうですね」 今は亡き京極のもち子さんの旦那。 私のお爺さま… 春輝と私は、あまり話したことが無かった幼い時から面倒をお爺さまに見てもらっていた。 体の弱かった春輝、何もしては駄目だと家から強制され荒れていた時に救ってくれた。 私が醜い顔で学校で虐められていた時に、何回も慰めてくれて暖かかったお爺さま。 春輝の存在は小さい時から知っていたけど、 あまり話すことはなかった。 そう、中学に上がるまでは… 「逃げちゃえよ、何処までも…誰もいないとこに」 春輝が私の背中を叩いた。 滅多に触れられたことが無いからびっくりしたけど、悪い気はしない。 「…いいのかしら」 「なんとかする」 その言葉に緊張が走る。 また、何かを抱えようとしているように感じた。 別に助けてほしいなんて言ってない。 「全部、あのクソ野郎が仕組んだんだな」 話すつもりじゃなかった決定的な言葉。 「なんで、それを…」 苦しくなっていく。 「見ちゃったんだよSDカードの中身」 「馬鹿…なの?」 そう、私はお父様から実家で言われたのだが、 鬼火組に手を貸したのは。 私と春輝への嫌がらせの為… 鬼火星那を使って、 私達に殺し合いでもさせたかったのか。 また、 お父様の仕業… 「全部1人で抱えんなよ」 「ごめんなさい、違うの、もう何もしないで」 春輝が最近変わってくれた。 きっと素敵な仲間が周りにいるから。 そう感じていた。 過去を捨てたんじゃないの? もう辞めて… このままじゃ“復讐”に走ってしまうから。 「ゆかりは逃げろ、俺が気に入らないらしいじゃん?はじめから俺狙いだったわけだ」  「…なんでそれを」 私もそれは確認してしまっていた。 家を出る前に、ある資料に目を通してしまったんだ…“鷹左右春輝を消す”などと言う野蛮な言葉を見てしまった。 私は春輝に逃げてほしいと伝えに来た。 まだ、立ち向かおうと言うの? 「あのSDカードの中身が俺宛なんだなって、気付いちゃったんだよね…」 「……1人で行くつもり?」 「…どうしようか考えてる」 暫く沈黙が訪れた。 お互いどう切り出そうか迷っていたが、 私は思いついたことを話し出した。 「こうしましょう…私は逃げるから、春輝はもっとみんなに頼りなさい…1人で無茶しないで」 「わかってるよ、俺だって死にたくない…」 …少し前に連絡をとっていた時、 春輝は「死にたくない」と 何度も口にするようになった。 自分が死んだら、誰かが悲しむ。 自分の好きな人が昔死んでしまったから、 同じなんだってようやく気付いたのね。 「落ち着いたら連絡するから、戻ってこいよ」 「…」 春輝の言葉には戸惑ってしまった。 もうみんなに合わせる顔がない。 最後だからって、 思い切った文章を送ってしまったから、 もう会うなんて出来ない。 …今更、怖かった。 「まぁ、連絡はする。」 「…私、行きますね」 その瞬間、腕を掴まれた。 「まだ早いだろ、行きたいとこは…ちゃんと全部回っとけよ…豪ちゃんにも会ってから行って」 「…わかりました…」 行きたい場所… あとは神社くらい… 成宮神社には行きたかった。 「…てかさ、俺の大事な用事に最後付き合ってくんない?」 「……?…ええ…」   頼られるのは珍しい事だった。 あと少しだけ、この街にいてもいいのかな… … もし俺が本当にやりたいことを、 見つける日が来たら、 この腐った世界を創り変えたい。 心の中にずっと閉じ込めていた感情は、 全てを諦めていたけれど… 最近 みんなとの関わりでやっと動き出した気がしていた。 ずっとずっと、 なりたかった… 誰かの 「光」に… だから… 後は俺が、 全部背負うだけだ。 END
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