僕と金魚

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*  夏休みも終わりに近付いてきた頃。デメ子を飼って約一ヶ月。……最近、デメ子の元気がないようだった。水の中でじっとしていることが多いし、エサの食い付きも悪い。  何かの病気だろうか。  心配になった僕は図書館に行って本やネットで色々と調べた。結局何の病気かはわからなかったけど、デメ子はとにかく弱っていて、このままだと危ない状態だということは分かった。だから僕はせめてもの対策として水温を一定に保ったりエアーポンプを交換したり水を換えたり、疲労回復に効くという塩浴も試した。これで少しでも元気になってくれればいいけど……。  金魚の寿命は十年〜十五年らしいけど、屋台で取ってきた金魚はストレスのせいで弱っているため、早く死んでしまうことが多いという。下手すると屋台に出る前に死んでしまう金魚もいるそうだ。……いや、でも。家で何十年も飼ってる金魚だっているし、デメ子は大丈夫。大丈夫だ。僕は自分に言い聞かせるように大丈夫を繰り返した。 *  僕の努力も虚しく、デメ子の症状は日に日に悪化しているようだった。時々水面付近でぼーっとしているし、横向きに浮いていることもあった。ケースを少し叩くと元通りに泳ぎ出すけど、僕はその姿を見つけるたびこのまま動かなくなったらどうしようと心臓が止まりそうになる。  どうしよう、どうしたらいい? どうしたら君と一緒にいれる? 君を失ってしまったら──僕には誰もいないのに。  デメ子は水槽の底でじっと動かず、口からぽこぽこと泡を出して僕のことを見ていた。
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