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──ハッと息を吐いて目を覚ました。天井に向かって伸ばされた手をゆっくりと下ろす。
今のは……夢?
ぼんやりとした頭の中でさっきまでの夢がぐるぐると巡る。
ひらりと舞う赤い尾鰭、デメ子、強い光……そこまで思い出すと、僕は慌てて飛び起きた。デメ子を入れていた水槽にドタドタと駆け寄る。どうか、どうか無事でいてくれと願いながら。
……狭い水槽の中で、デメ子は腹を上にしてぷかりと水面に浮いていた。
「……デメ子」
さっきの夢はデメ子の最後の挨拶だったのか。それとも僕の勝手な妄想か。いや、きっと前者だろう。だって、僕は知らなかった。
「……デメ子。君、オスだったんだね」
僕は一人、部屋の中で静かに泣いた。
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