僕と金魚

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 ──ハッと息を吐いて目を覚ました。天井に向かって伸ばされた手をゆっくりと下ろす。  今のは……夢?  ぼんやりとした頭の中でさっきまでの夢がぐるぐると巡る。  ひらりと舞う赤い尾鰭、デメ子、強い光……そこまで思い出すと、僕は慌てて飛び起きた。デメ子を入れていた水槽にドタドタと駆け寄る。どうか、どうか無事でいてくれと願いながら。  ……狭い水槽の中で、デメ子は腹を上にしてぷかりと水面に浮いていた。 「……デメ子」  さっきの夢はデメ子の最後の挨拶だったのか。それとも僕の勝手な妄想か。いや、きっと前者だろう。だって、僕は知らなかった。 「……デメ子。君、オスだったんだね」  僕は一人、部屋の中で静かに泣いた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加