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そんな遠い日の記憶が蘇ったのは、この雰囲気のせいだろうか。
近所でやっていた、小さな縁日。焼きそばやたこ焼き、わたあめといった定番の出店が並び、子どもたちを中心にたくさんの人で賑わっている。
「おとーさーん!」
「おー」
「見て! 金魚! すくったの! 初めて! 一人で!」
興奮気味に喋る俺にそっくりな少年は、右手に持っていた透明なビニール袋を掲げた。
懐かしい、帯のような尾鰭をひらひらさせた真っ赤な金魚。口をパクパクと動かして、何か言いたげにこっちを見ている。俺はふっと笑みを浮かべた。
「帰ったらお母さんにも見せるんだ!」
袋の中で、赤い金魚がぴしゃりと跳ねた。俺はマサキの小さな手を握る。
「マサキ」
「んー?」
「この金魚、大切にするんだぞ」
「うん!!」
どこかからヒグラシの鳴く声が聞こえてきた。
──嗚呼、もうすぐ夏が終わる。
金魚救い 了
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