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アレックスとハロルドは幼少期同じ家で時間を共にしていた。 互いに3歳だった頃、ハロルドがアレックスの家へとやってきた。 もちろんハロルドが魔族だとは、その時は知らない。
「お母さん、お母さん! ハロルドは? ハロルドはいつ来るの?」
「そうねぇ。 もう来るんじゃないかしら」
ハロルドがアレックスの家へやって来る理由は、ハロルドの両親が亡くなり一人になってしまったからだった。 同じ年の同性であれば、アレックスの訓練相手として使えると判断されたのだ。
アレックスは一人っ子だったため、兄弟ができると喜んだ。 ハロルドは仲介役の男に連れられやってきた。
物静かで俯きがちなのを見て、アレックスはハロルドを元気付けようと出会ってすぐ両手を強く握る。 両親を失ったという現実が、受け入れがたく辛いことは子供ながらによく分かったからだ。
「僕の名前はアレックス! ハロルド、よろしくなッ!」
ニカッと笑い握っている両手をぶんぶんと上下させる。 ハロルドは最初は驚いていたが、次第に表情が明るくなっていった。
「ハロルド、おいで!」
手を握ったまま部屋の奥へと招き入れる。
「今から、僕の家を案内してあげるよ!」
あちこち動き回りながら部屋を案内する。 頑張ってハロルドは憶えようとしてくれていた。
「それでー、ここがキッチンね! で、寝室なんだけど、家のスペース的にハロルドの部屋まで確保することができなかったんだ。 だから、寝る時は僕と一緒でもいい?」
そう言うとハロルドは笑顔で頷いてくれた。
「アレックス、ハロルドー。 遊ぶ前に、まずはご飯にしましょう」
「はーい! 行こう、ハロルド!」
ハロルドの腕を引っ張ったが、何故か彼は動かなかった。
「どうしたの?」
「・・・こんな僕でも、仲よくしてくれる?」
「もちろん! 今日からハロルドは、僕の家族なんだから!」
「ありがとう」
ハロルドは嬉しそうに微笑んだ。 二人はすぐに仲よくなった。 たまに喧嘩はするがすぐに仲直りをし、本当に楽しくて幸せな日々を送っていた。
だが時折、ハロルドはフッと表情に影を落とすことがある。
それは両親を失ったことが理由だと思っていたが、本当はハロルドが魔族であり、更に代表に選ばれていたからだと知ったのはそれからずっと先のことだった。
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