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私、坂井雪子は、新幹線で幼い娘と息子を連れて、名古屋駅に向かっていた。
季節は真夏の8月。お盆休みまっただ中。
新幹線で名古屋駅に行って、そこから在来線に乗り換えて岐阜駅に向かう。東京駅からなら2時間半ほどで到着出来るだろう。
3人で遠出するのは、初めてで、私は少し緊張している。
新幹線で、光莉と大地は窓側の席を取り合って、何とか2人で仲良く座ってもらうことにして、周りに迷惑をかけないよう約束した。
光莉は女の子だから、スマホをいじらせたり本を読ませてるとおとなしくしてくれるようになったけど、大地の方が男の子らしく元気でわんぱくだから、大人しく座っていてくれない。
「ママ、おさんぽしてくる!」
「だーめ。電車の中では大人しく座ってるってママと約束したでしょ?大地」
「ううぅ」
大地は頬を膨らませて、窓際で靴を脱いで椅子に上がり、外の景色を眺めていた。窓際の席を譲ってくれた光莉は、その隣(3人席の真ん中)に座って、本を読んでいる。
「パパ、さみしくないかなー。なんでおいてきちゃったの?」
大地がつまんなそうに言うと、私はギクッとして、本を読みながら横目で大地を見た。
「だって。お仕事入っちゃったんだもん。仕方ないでしょ。私はお休みズラせないし、岐阜のおじいちゃんたちには行くって言っちゃってたから、光莉と大地だけでも行かないと寂しがるわよ?」
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