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「眼鏡」
「え?」
教室の、窓際。眼鏡を拭く少女を、前の席に座る少年が見つめていた。
「なに?」
「いや、眼鏡、取ったら可愛いな、って思った」
「え?」
「え?」
少女は言われた言葉に驚き、少年は言ってしまった自分に驚いた。
互いに固まり見つめ合い、暫し沈黙が支配する。
「いや、なんでもない! オレは何も言ってない!」
我に返った少年は前を向く。赤くなった耳が後ろから見えた。
少女は拭き終わった眼鏡を見つめていた。
秋が近付く風がカーテンを揺らしていた。
翌日。
「あ」
少年が声を漏らす。
「なに?」
「いや」
少女は眼鏡を掛けてなかった。
「コンタクト、始めました」
少女の言葉に少年は眩しい笑顔を見せた。
「やっぱ、可愛いよ」
言ってしまってから慌てて前を向く。赤くなった耳が見えた。
頬を染めた少女は小さく「ありがと」と呟いた。
心地よい鼓動は微熱を生む。
恋が、始まる。
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