16・真相の先には

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「つまり、高校生なら疑われないってこともたくさんあってな。いわゆる運び屋とか受け子ってヤツとかな。そういうのに関わっていくんだ。ゆくゆくはヤクザ組織に入ってもいいし、真っ当な職に就きながらも続けていってもいいってことだ」 「……一度入ったら抜けらんねえってことか?」 「抜ける時は死ぬときだよなぁ、ヒヒッ」 「おまえはそれでいいのか? おまえだって、ただ純粋に美紗紀先輩を好きなだけだろ?」  それだけで勧誘されて気軽な気持ちで入って、一生抜け出せないなんて恐ろしい組織じゃないか。たかだか高校生の組織だとあなどっていたが、そんなヤクザやら犯罪やらが絡んでくるなら、悪魔信教の方がまだマシなんじゃないか?  いや、悪魔信教は悪魔信教でおかしな世界ではある気がするが。  だけど、高校二年生で一生そんなおかしな組織に縛り付けられることは無いはずだ。 「ハジメと同じことを言うんだなぁ、おめえ。けど、人の心配している場合かよ。ヒヒッ」  一斉に教会の壁の方がぼんやりと明るくなった気がした。  見ると、無数の人たちがロウソクを持って取り囲んでいる。音もなくいつの間に潜んでいたのか……。  俺が全てを知ったからなのか、例の黒ミサの衣装は誰ひとり来ていない。  よく見ると知っている顔もある。同じクラスのクマ野郎、寮長の谷村ゾウ先輩、結城の甥で葉に振られてもメゲないという吸血コウモリ、生徒会書記のヒョウの姿をした金沢、他にも男女問わず見たことあるヤツもいれば、知らないヤツもいる。全部で二、三十人はいるだろうか。  さすがにこれはゾッとする。確かに、逃げるという選択肢はなさそうだ。
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