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「ほら、彼も言っていただろう? キミは人の心配をしているような立場ではないんだ」
そう言ったかと思うと、片手をあげて合図をした。と同時に、俺はあっという間にこの集団に取り囲まれ、抵抗する間もなく宙を浮いたように天井を眺める形になった。
ヤバい、棺桶に入れられるのか?
と思ったときにはバラバラと周りから人が去り、手足が固定されて祭壇の上に寝かされたんだと理解した。そして、俺の周りにロウソクが並べられていく。
恐らくサタンの登場する位置には既にドラキュラの結城が立って、薄気味悪く笑いながらこちらを見下ろしている。
「冗談だろ? 結城センセイ。今日は満月じゃねえじゃん」
「ハハハハハッ。残念ながら、我々は悪魔信仰はしていないんだ。これからサタンが登場するという魔術も行われないから安心したまえ。ただし、さっきの短剣はキミの心臓を貫くがな」
マジかよ、どうにもなんねえのかよ。手足は固定式の頑丈な鉄の錠で身動きが出来なくなっている。
「そうそう、キミの頼みの綱だろうから断っておくが、二人の刑事さん達には地下牢で休んでいただいているよ。ここに助けに現れることはない」
「クソッたれ!」
「ハハハッ、せいぜい悪態をつくんだな。爽やか男子が台無しだぞ。泣いて許しを乞えば、一生下僕として使ってやってもいいがな」
「俺はここにいるヤツらとは違う! んなことするなら死んだ方がマシだ‼ おまえらみんな人間として最低だ‼ 地獄に堕ちろ‼」
「地獄に堕ちるのはお前だ。やれ!」
地の底から這い出たような結城の低い声を合図に、さっきまでのニヤニヤ顔から一変して、無表情に短剣を持っている圭介が俺の視界に入って来た。
どうあがいても、これは覚悟をしなければいけないと悟らざるを得ない。
頭に血が上って腹の底から怒りが湧き上がるが、両手両足が動かずもがいてもどうしようもない。
最期まで圭介を睨んで死んでやる! 俺の死に顔を一生こいつの心に焼き付けてやるんだ‼
だけど、圭介は無表情のまま、短剣を握っている手を振り上げようとしない。
「やれっ! おまえもここで同じ目に遭いたいのか⁉」
結城のその言葉に圭介が圭介が苦しそうな表情に変わり、短剣を持つ手に力が入った。
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