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「そんなわけないよ。さっきも言ったけど俺、ひとつ年下だし」
彼は首を振ってそう言った。
でも「そんなわけない」と言いたいのはこっちだった。
「嘘よ。だって、河上拓也……くん、でしょ? 第一小と、南中出身の」
すがるような気持ちで確認する。
「うん。それは間違いないよ。でも陽菜さんが思ってる人とは別人だと思う」
彼は少し困ったような顔をしてそう言った。
「そんな……」
信じられなかった。
顔もそっくりで、出身地も通っていた小中学校も、もちろん氏名も同じで、それでいて別人なんて──そんなことがあるのだろうか。
「……本当に、人違いだって言うの?」
正直、記憶力にはそれなりに自信があった。
でもそれを言うなら、彼だって私と同じくらいには優れた記憶力の持ち主だったはずなのだ。
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