今だけは夢を見よう-1

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「こっち。ついてきて」 そう言って二階へと続く階段に向かおうとした時だった。 「え……?」 左手が急に自由になったのだ。 驚いて振り返る。 「女の子にこんな重いもの持たせらんないって。自分で持つよ」 如才なく微笑むその顔は、間違いなく「彼」のもののはずなのに、なんだか別人のように見える。 五年も経てば、人は多少なりとも変わるだろう。 でも少なくとも私が最後に知る初恋の「彼」は、こういうタイプではなかったと思う。 「……ありがと。
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