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「こっち。ついてきて」
そう言って二階へと続く階段に向かおうとした時だった。
「え……?」
左手が急に自由になったのだ。
驚いて振り返る。
「女の子にこんな重いもの持たせらんないって。自分で持つよ」
如才なく微笑むその顔は、間違いなく「彼」のもののはずなのに、なんだか別人のように見える。
五年も経てば、人は多少なりとも変わるだろう。
でも少なくとも私が最後に知る初恋の「彼」は、こういうタイプではなかったと思う。
「……ありがと。拓也くん」
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