28人が本棚に入れています
本棚に追加
違和感に目をつぶって呼びかける。
我ながらぎこちない発音になってしまったけど。
顔が似ていても、名前が同じでも、別人──本人がそう主張するのだから、それを信じることにしよう。
私の記憶との齟齬はいったんわきに置いて。
「事実は小説より奇なり」ということにして。
それにいずれにしたって、私の初恋はとっくの昔に終わっている。
目の前のこの彼が私の初恋の人であろうとなかろうと、今更何も変わりはしないのだ。
「先に言うと、部屋は階段を上がって右ね」
今の私が悶々とする必要なんてない。
一カ月間、仲良くやれればそれでいいのだから。
最初のコメントを投稿しよう!