今だけは夢を見よう-3

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拓也は答えなかった。 あまりに沈黙が続いたので、私は隣を見る。 と、はっきりと目が合った。 なのに拓也は口を開かない。 「……私は今二十歳で、河上は十九。私は十二年生まれで、河上は十三年生まれ。それはほんとのこと。でも河上の誕生日は二月──十日」 つまりなのだ。 だから五月生まれの私よりも、現時点での実年齢はひとつ下になる。 でも当然、学年は同じだ。 「わざわざひとつ年下だって言い張ったのは……ほんとは私のこと、覚えてるからでしょ?」 拓也は一瞬迷うようなそぶりを見せたが、すぐにふっと表情を和らげた。
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