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「だって崎村は……」
もう取り繕う必要はないと思ったのだろうか。
拓也もついに当時の呼び方に戻った。
私は続きを待ちながら、薄明りの中ぼんやりと浮かぶその顔を見つける。
「……好きだったんだよ。崎村が。俺は」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
でも間もなく頭が追いついてくる──え? 嘘でしょ?
「……信じられないんだけど」
衝撃から立ち直ると、私は正直に言った。
だって、あの頃の私はといえば、引っ込み思案で目立たない地味な子だったから。
「信じなくてもいいよ」
そう言って拓也は視線を正面に戻した。
途端、あのころの面影を色濃く残した横顔が現れる。
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