今だけは夢を見よう-1

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「拓也くんのお父さん、せっかくなら故郷で過ごさせてやりたいって思ったそうなんだけど、この辺りにウィークリーマンションなんてないじゃない? だからお父さん、『ならうちはどうか』って……」 「ええ!?」 開いた口がとうとうふさがらなくなってしまった。 父は自分が家を留守にしている事実を忘れているのか? 「……すみません。突然のことで驚かれたと思いますが……お世話になります」 私が呆気に取られていると、彼がそう言って再び頭を下げてきた。 なんだろう。 これはもう「礼儀正しい」とか「丁寧」とかを通り越して、「他人行儀」だ。 私は胸がきゅうっと締め付けられるのを感じた。
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