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「部屋はお兄ちゃんのとこ、使ってもらおうと思って」
母が二階を指さした。
二階には私と兄の部屋がある。
私より九つも年上の兄はもう自分の家庭を持っているので、兄の部屋は実質空き部屋みたいなものだった。
「お兄はいいって?」
そう確認すると、母は首を縦に振った。
「うん。好きに使っていいって」
私はふうん、と曖昧に返事をした。
兄がこの家を出たのはもう何年も前の話だし、今ではそれこそお盆とお正月くらいしか帰ってこない。
そうなれば自分の部屋という認識も薄れるのだろうか。
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