『脱がし屋さん』

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「また一日、退屈な時間を過ごしたなあ」  これから僕はまたいつもと同じように自宅へ帰るだけ。歩きタバコはもう見かけないけれど、歩きスマホは特に咎められたことがない。ツイッターを開き、タイムラインを眺めながら歩く。アカウントはいくつか使い分けている。高校二年生の僕でも鍵付きで、フォロワー0のアカウントで未成年どころか、日本では規制されている卑猥なアカウントばかりをフォローしているアカウントも持っている。でも、出会い系とかには使わない。興味はあるけど怖いから。なんとなく。メインは趣味であるパソコンやネット小説のアカウント。このアカウントはとても悦に浸れる。何故ならフォロー数400ちょいに対して僕のフォロワーは3000を超えているから。リアルでは部活もやってないし、見た目も存在も地味だから彼女なんて当然いないし、上辺だけの友人なら何人かいるけど。本当に親しい友人は一人もいない。でも、ネットではよくリプし合う、仲のいい人はたくさんいる。僕がつぶやけば必ず少なくとも二桁のファボがつく。誹謗中傷どころか、丁寧な言葉しかかけられたことはない。それにブロック機能だってあるから。もしもの時はそれを使えばいいし。僕は帰り道もそうだけど、一日の退屈な時間を考え事で過ごすことも多い。スマホを弄るか、小説のネタを考える。そればかりだ。 「千葉薫(かおる)君だね」  僕はいきなりフルネームを知らない声で背後から言われたことに驚き、スマホの画面から目を離し振り向いた。 「17歳。〇〇高校二年で住所は〇〇〇〇」  合ってる。見た目は僕と同じぐらいの年頃。私服姿。男にしては長髪で目が寝起きのように眠そうなのが印象的だった。それよりも僕の個人情報をズバリ言い切るその男にものすごく恐怖を感じた。誰? 「え?分かんないけど。人違いじゃないですか?」  僕にしては百点の返事だった。とっさに言えたことも合わせてで。 「ツイッターアカウント名は〇〇〇〇」  合ってる。メインアカウントの方。もしかしてフォロワーさんに身バレした?ああいうSNSは本気を出せば特定出来ることも知っていた。でも、投稿した画像や動画に下手を打つようなものは身に覚えがない。男はお構いなしで続けた。 「もう一つのアカウント名は〇〇〇〇」  合ってる。エロアカウントの方。鍵垢でフォロワー数0なのにバレてる。 「君は一体・・・」  点数なんか付けられないけれどこれ以外の返事があれば教えて欲しい。
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