『脱がし屋さん』

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『癒し屋さん』アカウント  名前 『癒し屋さん』  自己紹介 平和な世の中になればいいなあ  位置情報 無記入  ウェブサイト 無記入  生年月日 無記入 「これが『癒し屋さん』のアカウントですか。うーん。どうなんでしょう」  『タカリ屋さん』がもみじ饅頭を食べながら熱いコーラを飲んでいる。 「それは熱いお茶替わりなの?」  センスのなさを指摘されたと思った僕はやり返した。 「よく分かりましたね。それより、あの『小春』名義の作品でいいのがあったじゃないですか。『物書きさん』。一話完結のものです」  え?僕の作品だって。 「自分が『1』になればいい話です。あれ、僕、すごく好きなんです」 『1』 になればいい話。僕の自信作だ。 「人間を数字に例えた話でしたよね。『3』の人、『7』の人、『25』の人。人はいろんな人がいます。数学で公約数を学びますよね。『2』の人と『3』の人は『6』の人とは交われる。けれど『8』の人とは『2』の人しか交われない。それなら自分は『1』になればいい。『1』になればすべての人と交われる。素敵なお話でした。『癒し屋さん』はまさに『1』になれる人だと思います。プロフィールもその方がいいのではないでしょうか」  その通りだ。僕は何も演じる必要はないんだ。僕が僕であればいいんだ。僕は僕に従えばいいんだ。僕はプロフィールを書き換える。「数字の『1』です」、と。あとは読み手に委ねるように。時折ヒントを入れながらその考えに気づいてもらえればいい。 「でも薫君。『1・5』の人はどうするんですか?ルート『2』の人だったらどうするんですか?」 「それは簡単だよ。『1・5』ならそこから『0・5』を足すか引けばいいだけだよ。ルートなら同じ数字をかければいい。それだけだ。それが『僕の力』なんだろ?」 「すごいですね。では後のアイコンと背景画像はどうしましょう?」 「僕は『物書きの端くれ』だ。絵やイラストは専門外だ。任せるよ。いや、ちょっと待って。拘りは大事だ。赤いコーラのアイコンで背景画像は『あたたか~い』がいいな」 「いいですね。それじゃあアカウント作りはこれで決定ですね。所在地なんかはどうでもいいでしょ。それでは用意した『問題』の方をお願いします。最初はこの人ですね」  『タカリ屋さん』が一台のスマホを僕に見せてきた。画面に映っている人を見て僕は驚いた。この人が『脱がし屋』のターゲットになっているの?  画面に映っている人はお金を配ることで有名な「あの人」だった。自称「お金配り大好き」の人。確かにやってることは賛否両論どころか真っ二つに分かれる人だとは思うけど。
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