『脱がし屋さん』

「『物書きさん』はこの方をどう思いますか？」

「どう思うって、そりゃあお金をチラつかせてフォロワーを増やす人でしょ？好きではないよ。でも『脱がし屋』のターゲットになるようなことをしてるの？」

「叩けばホコリはいくらでも出てきますね。それより本質です。『物書きさん』はどう判断するかが知りたいですね」

　今、日本で一番のフォロワー数を誇る実業家のアカウント。その人のアカウントをフォローして、ツイートをＲＴすることが条件で百万円を百人に抽選でプレゼントだとか、毎日十万円を抽選でプレゼントだとか。僕はハッキリ言ってこの人が嫌いだ。うざいのでミュートしてる。「ブロック」は逆にした方が負けと思うからしない。

「自己顕示欲の塊なんだろうね。きっと」

「本質はそこではありません。自己顕示欲は誰しもが持っていい平等な『欲』です。この人のフォロワー数、一千万を超えるフォロワーの半数以上がどんなアカウントか知ってます？」

　僕はそこでようやくピンときた。

「捨て垢だ！」

「そうです。多くの誹謗中傷を繰り返すアカウントは大体『捨て垢』です。リアル垢で誹謗中傷すれば『痛い人』じゃないですか。もちろんリアル垢で誹謗中傷をする人も多いです。それでも『匿名』だからがほとんどです」

「誹謗中傷をするアカウントは大体卵アイコンだ。そしてリプ以外はあの人の『お年玉キャンペーン』や『十万円プレゼント』をＲＴしている」

「そうです。この人の最大の罪はそう言った『捨て垢』を量産させたこと。そしてそれらの責任を取らず、『誹謗中傷は許さない』と法をチラつかせるだけ。いわゆる『法チラ』のみ。そもそも『鍵垢』、『捨て垢』にも現金が当たるチャンスがあることを条件にした時点でアウトなんですよ。それをすればどうなるかを考えられなかったのでしょう。いや、そこまでの先見の明を持ってなかったどころか、今もそれに気付いてません。もしくは気付いていないふりをしてます。『誹謗中傷を許さない』とのスタンスを見せるならフォロワー数を減らす工夫、行動、努力をすべきだと思います。それをしない時点で矛盾だらけなんですよ」

　『タカリ屋さん』の言うことはもっともだ。あの人のせいで詐欺も増えた。多くの人が振り回されている。

「薫君のリアルアカウントで考えてみましょう。あの数字をどう思ってます？」

　『タカリ屋さん』は本当に僕の心を見透かしている。僕のリアルアカウント。フォロー数４００ちょっとに対しフォロワー数３０００超え。

「僕のアカウントは最初、相互フォローだったんだ。僕はネットでの人間関係を大事にしないといけないと思っている。それで趣味が合いそうな人と繋がって。３００人ぐらいで相互フォローはやめにした。タイムラインで見たい人のツイートが見れなくなってきたから。フォロー数が四桁なんか超えたらタイムラインも早いし、全然見れなくなってしまうと思ったから。だから途中からはフォローを返さなくなったんだ」

「優越感はありませんか」

　『タカリ屋さん』に嘘は通じない。

「そりゃあもちろんあるよ」

「薫君をフォローしたのにフォローを返してくれてない人は二千六百人ほど。薫君。君は『何様』ですか？」