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その時また風が吹いて風鈴が鳴った。
美和さんが風鈴を見上げて言った。
「……この風鈴ね、どうしても縁側に飾りたくなって買ったんだけど、おじいちゃんとお義父さんに『風鈴っぽくない』とか『玄関のドアに付けたらどうだ』って言われてね。」
(あー……。やっぱりみんなも、玄関ドアにいいって思うんだね……。)
私はこっそり思った。
「あー! 今、佐智さんも玄関ぽいって思ったんでしょう。」
「あ! いえ! そんなことないですよー。」
私はあははと笑いながら言った。
「でもね? お義母さんは涼しそうな音色でいいんじゃない? って言ってくれたのよ。」
「へー! そうなんですか。……それにしても、伯母さんと本当に仲いいんですね。」
「でも、意見が合わない時もあるわよー? 私、ぽやっとしてるから、お義母さんをイラつかせちゃうこともあるし……って、ああっ!」
美和さんが突然大声を出した。
「いけない! 畑に戻らなきゃ……!」
そうだ。美和さんは畑仕事の手を止めてきてくれたんだった。
私は申し訳なく思った。
「美和さん、ごめんなさい! 怒られちゃいますね。」
「平気、平気。……あまりお話聞けなくてごめんなさい。とうもろこし食べてね! また後で!」
美和さんは慌ただしく畑に戻っていった。
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