風鈴の音色 花火の景色

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そしてみんなが畑から帰ってきた。 夕飯をテーブルに並べてると貴志兄さんが来て、 「佐智、元気だったか?」 と言いながら、わしゃわしゃと私の頭を強く撫でた。 「ちょっ……! 貴志兄さん、髪がぐちゃぐちゃになっちゃうからやめて!」 私は慌てて髪を直す。 「わははは。」 貴志兄さんが楽しそうに笑う。 「もう! ……兄さん、元気そうね。私も元気にしてるよ。」 「そっか。よかった。……後で花火観に行こうな。」 今度は優しく私の頭に手を置いた。 (……何も聞かないでくれるんだ。) 私はちょっとほっとして、貴志兄さんの気遣いがありがたいと思った。 花火大会には軽く夕飯をいただいた後で出掛けることにした。 と言っても、行くのは貴志兄さんと美和さんと私の3人だ。 おじいちゃんは伯父さんと晩酌をしてるし、おばあちゃんと伯母さんは家でゆっくりしたいらしかった。 おばあちゃんが私に浴衣を着せてくれる。 例の紫陽花の浴衣に、鮮やかな青い帯を締めてくれた。 「支度終わった?」 そう声を掛けてくれた美和さんも浴衣を着ている。 青い朝顔柄で、落ち着いた赤紫の帯をしている。 「じゃ、行きましょう。」 美和さんが私の背中を楽しそうに押す。 「え? あ? 草履は……!?」 「サンダルでいいわよー。おしゃれだし、足の指も痛くならないし。」 くすくす笑う美和さん。 そんなやり取りをしてると、後ろから貴志兄さんが、 「2人で楽しそうだな。俺も混ぜろ。」 と笑いながら言ってきた。
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