風鈴の音色 花火の景色

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―ドォーン……。 特大の花火が開いた。 その時突然、私の心にある思いが閃いた。 そうか。 私は幸紀が好き。 この気持ちだけでも、いいんだ。 だって隣にいる貴志兄さんと美和さんも幸せそうだ。 今までいいこと悪いこと、嬉しいこと辛いことも色々あったはずなのに。 私のお父さんお母さん。伯父さん伯母さん。 おじいちゃんおばあちゃん。……ほかにも私の周りにいる夫婦。 結婚して生活していて、山もあれば谷もあったはずなのに、ずっと一緒にいるじゃないか。 人生の先輩たちを思うと、色々難しく考えなくても大丈夫な気がしてきた。 「……美和さん。」 私は夜空を見上げたまま言った。 「ん?」 美和さんがこっちを向いた気配がする。 「私、……決心しました。」 美和さんに視線を向け、私は笑顔で言った。 「新しい世界に、飛び込んでみます。」 「……佐智さん、とってもいい表情してる。」 美和さんが横からぎゅっと私を抱きしめてきた。 「貴志さんにとっても私にとっても、あなたは大切な妹よ。どうしても耐えられない辛いことがあったら、いつでもここに来て。」 「……ありがとう。美和『姉さん』。」 私は美和さんの温かい腕にそっと触れた。 「おいおい、美和。佐智を独り占めするなよ。」 貴志兄さんが、美和さんと私の頭にポンと手を置く。 そんな兄さんの手も大きくて温かかった。
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