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花火大会はいよいよクライマックスだ。
貴志兄さんによると、クラシック音楽が流れる中で連続の花火が上がる豪華なプログラムになっているらしい。
『準備ができるまで少々お待ちください。』というアナウンスがあった。
「……佐智。帰ったら一緒に呑むぞ。俺はまだお前と全然話できてないんだから、付き合え。」
「うん! 私も、貴志兄さんといっぱい話したいと思ってた。」
「おう! 悩みも聞いてやるぞ。」
ああ、貴志兄さんは本当は聞きたかったんだ。私がここに来た理由を。
私は貴志兄さんに笑顔で言った。
「ありがとう、兄さん。でもせっかくなら、夫婦円満の秘訣とか聞きたいな。……今後の参考に。」
貴志兄さんが驚いている。
「何!? 佐智、結婚するのか? どんな奴とだ!」
私と美和さんは顔を見合わせた。そして2人でくすくすと笑い合う。
『お待たせしました。本日最後のプログラムです。どうぞ!』
アナウンスが終わると同時に音楽が流れた。
最初は『G線上のアリア』。
菊の花のように開いて余韻を残しながら消えていく花火や、小ぶりで可愛らしい色とりどりの花火がいくつも上がる。
そして音がフェイドアウトし、曲が『ハレルヤ』に変わった。
豪華な合唱とオーケストラの音楽に合わせて様々な花火が夜空に開いていく。
地上から斜めに左から右へ、右から左へ何発も噴き出す花火もあった。
数えきれないくらいたくさんの金色や白色の花火が連続で視界いっぱいに咲いていった。
圧倒されて、涙が出そうになる。
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